腕時計や目覚まし時計と同じように、自動車のダッシュボードの時計も、動力源として電力が使われる以前は、ゼンマイの力によって駆動する手巻き式の時計が使われていました。Waltham、Westclox、Heuer、Cartier etc. メーカーは本当に様々ですが、個人的にダッシュボードクロックと言えばSmiths(スミス)社の名前をあげたい。アクセサリーの延長線上にある腕時計とはそもそも選ぶ基準が違って、1904年から自動車の計器類を作ってきた業界のパイオニアとしてのSmiths社は、信頼という点で選ぶに足るブランドであると思う。そしてそれは今日アップしたSmithsのダッシュボードクロックが、製造後100年近くを経た現在も日差±3分以内で動作しているという驚くべき事実によって、さらに揺るぎないものとなりました。
しかし、これだけいいもの作りをしていながら、Smithsは妥当な評価を受けてはいないと感じます。現在は一部の好事家のみが知るブランドといった趣があって、そこがまたいいのだろうけれど、それでは評価がちと低すぎる。おそらくマスメディアを上手に使ってこなかったからなのではないだろうか。
お恥ずかしいことに私は以前、1953年にヒラリーとテンジンがエベレストへの初登頂に成功した際、彼らの腕にはロレックスの腕時計がはめられていた、という間違った知識を持っていた。実際のところロレックスを腕にはめていたのはテンジンで、ヒラリー卿はSmithsの時計をはめていたわけですが、これこそまさにメディアの使い方の巧い下手の表れではないかと。