お客様から古い荷物を整理したいというご依頼をいただき、伺った時のこと。
そのお宅の納屋には、古そうな木箱やら贈答品やらが山積みとなっており、それらを物色していると、ふと隅っこに置かれているアンモボックスが目に留まった。戦時中の古いタイプのアンモボックスだ。
早速中を開けてみると、オイルの臭いとともに、ペンチやらモンキーやらヤスリやら、様々な工具が出てきた。ひととおり工具を取り出し、最後に布製の袋が残った。取り出してみると、ずっしりと重たい。口を開くと、長さ10cmほどの釘が、数えてみると50本ほど詰まっていた。まんべんなくオイルがゆき渡っていて、指先はすでに真っ黒だった。
依頼者はこの工具がいつからここにあり、誰が使っていたのか、さっぱりわからないと言う。アンモボックスの底には、油が染みこんで茶色くなった昭和30年2月4日の朝日新聞が敷いてあった。