This is Cello

宇宴さんのスピーカーを手に入れて以来、これまで聴いてこなかったジャンルの音楽やアーティストを意識的に聴くようにしているが、どうにもこうにもずっと馴染めなかったクラシックが、チェロに限っては聴けるようになったのは、自分の中での大きな変化だと思う。

そんな中、先日店に来てくれた女性が、話しているうちに、実はチェロ奏者の吉良都さんだということを知る。しかもその日は仕事帰りで、なんと車にチェロを積んでいるという。

ちょっと待て、ひょっとすると、これはものすごいチャンスなのではないだろうか?なんて思いが、お疲れのところ申し訳ないと思う気持ちに勝ってしまい、ついうっかり口から出てしまった。

「き、聴いてみたいです!」

そしたらなんと「ぜひ」なんて言ってくださり、軽いフットワークですぐに車までチェロを取りに行って下さった。

「お疲れのところ、こんなに重たそうものをほんっとに申し訳ないです」と僕が言うと、「いいえ、チェロって実は軽いんですよ」なんて言う。人間、疲れている時ほどつい本音が出てしまうものだが、この人の優しさは本物だ。

「いやいや、そんなことはないでしょう」なんて言いつつ、いざチェロを持たせてもらうと、これが拍子抜けするくらい軽くて、罪の意識は半分くらいになった。

そんなことはさておき、早速弾いて下さったのが、つい最近Spotifyのプレイリスト「This is BACH」で知った

無伴奏チェロ組曲なんちゃら

「なんちゃら」の部分がどうしても覚えられないところに、僕の音楽に対する中途半端な熱量が表れているが、そんな僕に、いや、僕のためだけにと言ってもいいだろう。目の前で聴くチェロの音色は、スピーカーを通して聴いたことしかなかった僕の想像をはるかに超える響き方で、体の芯に響くような力強さがあり、でも心地よく、うーん、なんだかうまく言えなくてもどかしいが、いつかこの店でライブをやっていただきたい。天井を抜いてて音が筒抜けだから、2階の住人さんから苦情がくることは間違いないと思われるが。

吉良都さん

吉良さん、お疲れのところ本当にありがとうございました。こんな体験をさせてもらえるなんて夢のようで、もう感謝しかありません。そして今回、ここまで感動できたのも、宇宴さんのスピーカーでチェロを聴き始めていたからであって、宇宴さんにも改めて感謝します。